Radiohead - Amnesiac - 天国と地獄
兎にも角にも、
このアルバムの冒頭2曲が好きだ。
まず、
『Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box』
直訳すると、
『潰された缶に詰め込まれたイワシのようなもの』
After years of waiting
何年も待ったけど
Nothing came
何もやって来なかった
As your life flashed before your eyes
人生が目の前で閃光のように通り過ぎて
You realize
君は気付くんだ
Looking in the wrong place
違った場所を探してたんだって
この歌詞の通り、このアルバムは絶望から始まる。
絶望的な歌詞に、ダンサンブルな曲調。
頭の中とは裏腹に身体が自然とステップを踏んでしまう。
なんだかそれはまるで操り人形のようだ。
つぎの曲は、『Pyramid Song』
All my past and futures
全ての過去と未来がそこにはあって
And we all went to heaven in a little row boat
そして僕らは小さな舟に乗って天国へと向かったんだ
There was nothing to fear and nothing to doubt
そこには恐れるものも疑うものもなかったんだ
1曲目の『Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box』とは正反対だ。
1曲目で絶望を歌ったと思ったら、
2曲目ではゆったりとしたあまりにも美しい、心穏やかな情景、が表現されている。
全てを悟り、全てを受け入れ、行くべき場所へ、進んで行ける、理想的な状態だ。
僕の解釈では、この2つの曲で、
”地獄”=”違った場所”
と
”天国”=”正しい場所”
が表現されていると思う。
このアルバムのタイトルは、
『Amnesiac アムニージアック』
日本語で『記憶喪失者』だ。
“地獄”は、今僕たちが置かれた現実のことではないだろうか。
世界には環境問題や戦争を始め、
様々な本当に地獄のようなことが多く起きていて、
それらが起きてはいけない事だと認識しつつも、
それを解決する”意志”は、もはや僕らの中には存在していないんじゃないか、
その状態は僕らのあるべき姿から大分外れてしまっていて、
何処の海岸に打ち上げられた潰れたイワシ缶のような状態であって、
人で例えるのならば、それはまさに『記憶喪失者』とも見えてしまう、
そういう定義ではないだろうか。
一方で、”天国”は、
僕らが目指すべき場所なのだろう。
そうこのアルバムは語りかけてくる。
そのことを伝えるためにこのアルバムは作られた、と僕はそう思っている。
こんな恐れるものや疑うものに溢れた世界は、僕らがいるべき場所じゃない。
それらから解放された目指すべき場所がある。
それは、別の意味で、
一度、今までの”記憶”をリセットして、
改めて現実と向き合ってみよう。
そうしたら、いつか辿り着けるよ。
というトム・ヨークからの
希望のメッセージとして、捉えても良いのではないかな。